医王山薬王寺の障壁画前に座る、仲井妙蓮住職と斉藤和
多くの寺社に作品を奉納してきた日本画家・斉藤和。2002年に初めて障壁画として収めた
「陽のこぼれる」と「月のつつまれし」が、医王山薬王寺(広島県東広島市)にある。
「私にとってはこの絵は相棒です。一番は弘法大師様ですが、今や自分よりも大切な存在となっています」
そう語るのは、ご住職の仲井妙蓮氏。
日本画を支える「岩絵の具」という宝石の色
日本画に使われる岩絵の具は、翡翠・瑠璃・珊瑚など、天然の鉱石や貴石を砕いてつくられる顔料です。
光を柔らかく受けとめ、時間とともに深みを増すその質感は、“飾る宝石”と呼ばれるほどの静かな輝きを宿しています。
斉藤和も、この岩絵の具を一粒ずつ丁寧に重ねながら制作を続けています。
粒子が呼吸するように光を放ち、空間に静けさと品格をもたらす──
それが、彼の作品が持つ唯一無二の魅力です。
2024年 開高健著【夏の闇】フランス語版の表紙絵を手掛ける
2024年 絵本「大きなパパくまさん~四国おへんろ篇」の挿画担当。世界9か国で翻訳される
2024年 ニューヨーク「Galerie de nuage」ギャラリーに作品出展
2025年 タイのナチュラルスパブランド「PANPURI」のHoliday2026コレクションパッケージデザインを担当
「京都から世界へ」。
斉藤和が若い頃から抱き続けたこの想いは、
日本画の伝統を現代に生かし、世界へ届けるという“使命”でした。
京都での修行で磨いた岩絵の具の表現は、
静けさと祈りを宿す独自の世界観となり、
やがてニューヨークやタイ、フランスへと広がっていきます。
こうして斉藤和は「世界のサイトウ」と呼ばれる存在となり、
今もなお、日本画の新しい地平を切り開きながら、
その歩みを静かに、確かに世界へ広げ続けています。
現場に身を置くことを信条とする彼は、
今日もどこかで静かにスケッチの旅を続けているのかもしれない。
《花の袂に》は、香川県さぬき市にある四国八十八か所霊場・八十六番札所のお寺、志度寺の五重塔を花々が包むように描き、土地の記憶や祈り、人々の想いが重なり合う一枚。
海女の玉取伝説が宿る地の静けさと力強さが共鳴し、自然と建築が調和する“祈りの風景”を映し出しています。