-絶望と希望を織りまぜてはるかに続く一筋の道であった-
制作70周年記念・限定500部、新技法「彩美版®プレミアム」で今よみがえる。
東山魁夷は、自然の美しさを静謐に描写する風景画で魅了し続ける、昭和と平成を代表する日本画家です。本作品「道」は、画家として初期のころに描かれた作品で、確立しつつあった「シンプルな画面構成」「青系統の色調表現」の特色が顕著に出ています。取材地は青森県八戸の種差海岸にある国道です。当時実際にあった建物などを略筆し、象徴性の高い、心象風景のような作品となっています。描かれた上り坂の一本道は、鑑賞する私たちの進む前途や希望と重なり、自分自身を奮い立たせ、また内観させる問いかけをしてくるようです。
東山魁夷が国民的画家と呼ばれるようになったきっかけが、1950年に発表された「道」でした。魁夷はこの作品について「私にとっては遍歴の果てでもあり、また、新しく始まる道でもあります。」と語っています。1950年という年は敗戦から五年目、ようやく復興の兆しが見えはじめてきた時期です。魁夷は戦争末期の1945年7月に37歳で召集され熊本へ送られます。爆弾を抱えて戦車に肉弾戦を挑む追撃兵二等兵としての訓練を受け、死を覚悟します。そのころ教練で登った熊本城天守閣跡から眺めた阿蘇の山並みの美しさが魁夷の心を強く打ちます。
その直後に敗戦を迎え、魁夷自身は生き永らえたものの、母と弟を立てつづけに亡くし、すべての肉親を失います。翌1946年の日展では落選、47年、絶望のなかで山並みに自分の心を重ねて描いた「残照」が特選を受賞します。以来、魁夷は風景画家として立つことを決意し、自分の心象を風景に投影させて絵を描くようになりました。「道」はその象徴的な作品です。